認知症の人への接し方の5原則とは?認知症看護認定看護師が解説します

認知症のケアに携わっていると、「なぜ急に怒り出すんだろう?」「病院に来るとすぐに『帰る』と言って聞かない」「何度説明しても伝わらなくて疲れてしまった…」と感じる瞬間がよくありますよね 。

認知症の方は、よく「何もわからなくなった人」と見られていますが、実際には自分の能力が低下していることをある程度理解してます。そして「この先どうなってしまうんだろう」という強い不安を常に抱えて過ごしています 。

そのため、今回はそのような本人の不安を和らげ、穏やかな生活を送るために接し方の「5つの原則」を詳しく解説します 。

1. 記憶は「ごく最近」から失われる

認知症の方は、脳の海馬という最近の出来事を一時的に保持しておくところが萎縮します。

そのため、数日前のできごとや、さっき話したことなどの「直近の記憶」から忘れていきます

  • 普通の物忘れとの違い: 片付けた場所を忘れるのではなく、「片付けたこと自体」を忘れてしまいます 。
  • 「盗まれた」という思い込み: 自分で片付けた記憶が消えてしまうため、物が見当たらないと「誰かに盗まれた」という物盗られ妄想に繋がることがあります 。
  • 対応のコツ:物忘れが軽度であれば、日記をつける・メモ帳を持ち歩くといった習慣が有効です。また、 同じことを何度も聞かれても、初めて聞かれた時のように丁寧に答え、安心させてあげることがトラブルを防ぐ鍵です 。さらに、昔のことは覚えているため、以前の仕事や学生時代のことを聞くと、楽しそうに話して穏やかになることが多いです。

2. 出来事を忘れても「感情」は残る

これは、認知症ケアにおいて本人を「嫌な気持ちにさせない」ということはものすごく重要な原則になります。

具体的なエピソートは忘れてしまっても、その時に感じた「嫌だった」「嬉しかった」という感情は心に留まります

引用:認知症ケア – デイサービス ケアスタ中町|栗原市金成の介護
ヒッコリー
ヒッコリー

上記の図のように記憶をつかさどる海馬と、感情を支配する扁桃体は隣り合っており、

嫌な感情を受けると海馬に働きかけ、エピソードは残りませんが感情だけは記憶されます。

例えば、お風呂を嫌がるのに何回も誘うと、嫌な記憶として残りなかなか入ってくれなくなります

  • 対応のコツ: 逆に言えば「良い感情」も残ります明るくポジティブな対応を心がけることで、「この人は優しくて信頼できる」という関係性を築けます 。食事やお風呂を気の乗らない時に無理に誘うと「嫌な記憶」として残るので、時間を置いて改めて話しかけると良いでしょう。

3. 症状は「身近な人」ほど強く出る

皮肉なことに、認知症の症状は、いつも自分を支えてくれる一番身近な人に対して最も強く出る傾向があります 。

  • 信頼と防衛本能: 信頼しているからこそイライラをぶつけやすいという理由と、「自分のダメなところを知っている人」に馬鹿にされたくないという悔しさから強い態度に出てしまうという理由があります 。
  • 対応のコツ: 相手が怒っている時は、真正面からやり合わず穏やかに対応しましょう 。どうしても難しい時は、主治医など「第三者」に頼むと、素直に聞いてくれることもあります 。
ヒッコリー
ヒッコリー

認知症が進んでも、挨拶は愛想良くできたり、白衣を着た医師には礼儀正しく接することができます

これは「社会性」は認知症が進行しても比較的保たれる傾向があることを示しています。

本人が家族に強く当たっている場合は、医療者やサービス担当者などに仲介してもらうと、事がスムーズに進むことがよくあります。

4. 「こだわり」が強くなる

一つのことに執着すると、それが頭から離れなくなるのも認知症の特徴です

  • 不安の裏返し: 認知症の人は自分の能力が落ちていく不安を自覚しています。その不安を振り払うため、「できること」や「好きなこと」に執着して安心を得ようとしています
  • 対応のコツ: 無理に説得しようとすると、かえってこだわりが強くなってしまいます 。危険がないのであれば、そのままにしておきましょう 。多くの場合、半年から1年ほどで自然に落ち着いていきます 。
ヒッコリー
ヒッコリー

「前頭側頭型認知症」の方は脱抑制(衝動的に行動してしまう)常同行動(毎日同じルーティンを繰り返す)という症状がみられます。この行動を制止しようとすると激怒しますので、ルーティンを安全な範囲で続けてもらいましょう。逆に車の運転など危険な場合は、鍵を本人から見えないようにするなど、きっかけになるものを遠ざけるようにしましょう

5. 体調によって症状が変化する

「最近、急に認知症が悪くなった」と相談を受けることがよくあります。

しかし、認知症は基本的には急には進行しません

認知症の症状が急激に悪化したように見える時、実は「体の不調」が隠れている場合があります 。

  • 見逃しやすいサイン: 痛みやかゆみ、便秘、睡眠不足などの不快感を言葉で説明できないため、それが「怒り」や「反応の悪さ」として現れます 。また、正常圧水頭症(脳内の水が溜まっている)ビタミン不足、甲状腺機能低下などの病気が隠れている場合があります。
  • 対応のコツ: 「いつもと様子が違う」と感じたら、まずは熱はないか、排便はどうかなど、体調の変化をチェックしてあげることが非常に大切です 。上記の病気の可能性もあり、その場合は早期対応で改善できます。早めにかかりつけ医を受診して相談しましょう。

最後に:ケアをするあなた自身を大切に

日々認知症の介護やケアに携わっている方のお話を聞くと皆さん本当に一生懸命になり接しています。

しかし、一生懸命な人ほど、完璧を求めて疲弊してしまいがちです 。

うまくいく秘訣は、「適度に手を抜くこと」にあります 。

在宅で介護されている方は、 デイサービスなどの外部サービスを活用して自分の時間を確保し、リフレッシュすることが長続きのコツです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。他の記事も、あなたの毎日のケアに寄り添うヒントになれば嬉しいです。ぜひ、お時間のある時にあわせて読んでみてください。

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