認知症治療は新時代へ レカネマブ・ドナネマブとは? 新薬「抗体療法」について認知症看護認定看護師がわかりやすく解説します

認知症看護認定看護師のヒッコリーです。

最近、認知症治療の分野では「歴史的な転換点」とも言える大きな変化が起きているのをご存じですか?

ニュースで「レカネマブ」や「ドナネマブ」といった認知症の最新治療薬の名前を聞いたことがある方もいると思います。

これらのお薬は、これまでの認知症薬とは「根本的な仕組み」が全く異なります。今回は、最新の資料に基づき、新しいお薬の特徴や、使うために必要な検査、そしてこれまでの飲み薬(ドネペジルなど)との違いについて、じっくり解説していきます。

1. 「症状を和らげる薬」と「原因を除去する薬」の違い

まず皆さんに知っていただきたいのは、これまでの薬と新しい薬では、その「目的」が大きく違うということです。

● 従来薬:ドネペジル(商品名:アリセプトなど) ドネペジルなどの飲み薬は、脳内の神経伝達物質である「アセチルコリン」が減るのを防ぐお薬です。いわば、脳のネットワークの連絡をスムーズにする「潤滑剤」のような役割があります。

  • メリット: 飲み薬で手軽です。意欲が出たり家事がしやすくなったりと、現在の症状を一時的に和らげる効果(対症療法)があります。
  • 限界: 認知症そのものの進行(脳の中にゴミがたまること)を止める力はありません。

一方で、新薬:抗体療法(レカネマブ、ドナネマブ)  新しいお薬は、アルツハイマー病の原因とされるタンパク質「アミロイドβ」を脳内から直接除去しようとするものです。

参照:毎日新聞 2022年10月13日朝刊より
  • 仕組み: 脳の汚れ(ゴミ)を直接掃除して、病気の進行そのものを止める・治すことを狙っています
  • 効果: 研究結果によると、18ヶ月の投与で悪化のスピードを「約5〜7.5ヶ月分」遅らせるという結果が出ています。これは「完治」ではありませんが、「これまで通りの生活」を長く維持できる可能性を広げてくれます。
ヒッコリー
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パソコンに例えると、ドネペジルは「Wi-Fiを新しくして一時的につながりを良くする」もの。しかしこれでは、パソコン自体が劣化すると徐々に応答速度は低下していきます。

対して新薬は「重くなっているデータやウイルスを除去する」ものと言えるでしょう。このように根本的に解決を図ろうというのが新薬であると考えてもらえれば良いと思います。

2. 投与の前に必ず必要な「2つの精密検査」

この新しいお薬は、「物忘れが気になるから」といって誰でもすぐに使えるわけではありません脳内に「アミロイドβ」が確かに溜まっていることを確認する必要があります。そのための検査が、資料にある「PET検査」と「髄液検査」です。

①アミロイド PET(ペット)検査:脳内の原因物質を画像で「見える化」する  

特殊な薬を注射してから撮影することで、脳内のアミロイドβがどこに・どれくらい溜まっているかを画像で見分ける検査です。

参照:湘南鎌倉総合病院HPより
ヒッコリー
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アミロイドPET検査は自費であれば1回の検査で30~60万円と非常に効果な検査ですが、保険適用されるため、75歳以上の後期高齢者であれば1割負担の3~6万円で受けれらます。それでも高いですけどね(笑)

② 髄液(ずいえき)検査:成分から「アルツハイマー型認知症の証拠」をつかむ 

背中に細い針を刺して、脳の周囲にある「髄液」という液体を採取し、その中のタンパク質成分を分析します。

参照:日本東京血管内皮前駆細胞幹細胞移療研究所グループ

これらに加え、認知機能のテスト(MMSE 22点以上などの基準)を行い、条件を満たした「早期」の方だけが治療に進むことができます。

3. 最新の2大治療薬:レカネマブとドナネマブ

現在、日本で注目されているのは以下の2つです。

  • レカネマブ(レケンビ®) 2週間に1回、約1時間の点滴を行います。治療のため継続的に通院が必要です。
  • ドナネマブ(ケサンラ®) 4週間に1回の点滴で済み、患者さんの負担が少し軽くなります。最大の特徴は、「脳の掃除が終わった(アミロイドβが除去された)」と検査で確認できれば、投与を完了して終了できるという点です。

基本は定期的な通院が必要:上記の通り、 点滴のためにレカネマブなら月2回・ドナネマブなら月1回の通院が必要です。

「最初の数回だけ入院」するケースも: 下記に説明する副作用(ARIA:脳のむくみや出血)は投与の初期に起こりやすい傾向があります。そのため、安全を期して「最初の数回だけ1泊2日などで入院し、点滴後の身体の状態を確認する」という方針をとっている病院も多くあります。

4. 知っておくべき「副作用(ARIA)」とリスク

期待が大きい一方で、覚えておくべき「副作用」も存在しています。特に注意が必要なのがARIA(アリア)という現象です。

これは「画像上の異常」を指し、脳の血管から成分が漏れて「むくみ(浮腫)」が起きたり、ごく小さな「出血」が起きたりすることを言います。下に実際の画像を示します。

参照:群馬大学医学部付属病院 認知症疾患医療センター
  • 多くの方は無症状ですが、稀に頭痛、めまい、ふらつきなどが出ることがあります。
  • そのため、投与開始からしばらくは、月に一度などの頻度で定期的にMRI検査を受けることが必須となります。

治療費も高額であり、定期的な通院や検査、副作用の管理など、ご本人だけでなくご家族のサポートも非常に重要になる治療です。

5. 最後に:認知症看護の視点からお伝えしたいこと

2026年現在、自宅や近所のクリニックで短時間で済ませられる「皮下注射」タイプの開発も最終段階にあります。これが普及すれば、病院で1時間点滴を待つ負担は大幅に軽減されるでしょう。

いずれにしても、現段階の新しいお薬は失われた記憶が完全に戻るわけではなく、あくまで「今の時間を少しでも長く、大切に過ごすための手段」の一つです。

「どの治療が自分たちにとってベストなのか?」 それは、医学的な効果だけでなく、通院の負担や副作用のリスク、そして大切なのはご本人が「どんな毎日を過ごしたいか」です。そのご希望を十分に考慮して決めていただきたいです。

もし迷われたら、まずは専門医や、私たちのような医療スタッフにご相談ください。一緒に最適な道を考えていきましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。他にも、現場の視点から生まれたケアの知識や知恵をたくさん用意しています。あなたの毎日のケアに寄り添うヒントになれば嬉しいです。ぜひ、お時間のある時に併せて読んでみてくださいね。

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